みなさまご一緒に医療知識を学びましょう!≪便潜血検査≫

222

今年も検診のシーズンが始まっています。今回は検診項目の一つ、“便潜血検査”について書きたいと思います。

便潜血検査を受けたことがありますか?
 これは糞便中に含まれる微量の血液(ヒトヘモグロビン)の有無を調べる検査(免疫学的潜血反応)で、大腸ガンを診断する検査のひとつとして行われています。近年、大腸がんに罹る人は増え続けており、女性における死亡原因のトップとなっています。男性では死亡原因の第3 位で、2015 年には第1 位になると予想されています。大腸がんがあると便ががんの表面をこすって血が混ざることを利用して、便に血液が潜んでいないかを調べます。陽性なら大腸がんかもしれない、という事になります。大腸がんは持続的に出血しているとは限らないので、2 日間の便を1 セットとして実施します。採取方法は簡単で痛みもありません。これまでの多くの研究から、便潜血検査による大腸がん検診は、早期発見そして死亡率の減少に有効であることが証明されています。

333

陽性(+): 検査上、大腸からの出血が認められた。
 ・・・・精密検査(大腸内視鏡など)を行い、出血の原因を確認することが大切です。    
陰性(-): 検査上、大腸からの出血は認められない。
 ・・・・次回の検診を受けて下さい。

ただし、便潜血検査の結果が100%正しいとは言い切れません。大腸がんではなくても陽性という結果が出る「偽陽性」(ぎようせい)が起きる場合があります。反対に結果は陰性でも、大腸がんが見逃されている「偽陰性」(ぎいんせい)の場合もあります。大腸癌があるかないかを最終的に確定するためには精密検査(大腸内視鏡検査)が必要になります。ですが、健康な集団の中から、大腸がんの精密検査が必要な人を選び出すためには、便潜血検査は最も有効で負担の少ない検査法です。

これまでの検証により、便潜血検査によるスクリーニングは、大腸癌の死亡リスクを、その後18~20年の観察において、15~33%有意に低下させる効果が確認されています。大腸癌による死亡リスクは、1年に1回の検診では32%、2年に1回の検診では22%、それぞれ有意に低下しました。このように、大腸癌検診としての便潜血の検診は、長期に渡る大腸癌の死亡リスクの低下に結び付く、という点での効果は確立されています。
(The NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE September 19,2013より)

他の検診法と比較した便潜血検査の最大の利点は、検査自体に偶発症(副作用や事故)がないことです。不利益としては、偽陰性(便潜血検査での大腸がんの見逃し)によるがん発見の遅れと偽陽性(本当は病変がないのに精密検査が必要と判定されること)による精神的苦痛および精密検査に伴う肉体的苦痛・偶発症が挙げられます。

便潜血検査が陽性になった場合には、
その原因を明らかにするために、精密検査(当院では大腸内視鏡検査をおすすめしています)を受けることが必要です。病変から常に出血しているとは限りませんので、陽性になった場合に、精密検査のかわりとして便潜血検査を再度行うことは意味がありません。きちんと精密検査を受けることが大事です。陽性の結果が出たら、検診を受けた医療機関や、最寄りの一般内科、外科、消化器科、通院中のかかりつけ医などを受診するようにしましょう。受診後、専門の医療機関を紹介されたり、大腸の精密検査を予約したりすることになります。なお、便に血が混ざっていると一目でわかる場合は、便潜血検査を受けることは意味がありません。治療を必要とする場合があると思いますので、すぐに医療機関を受診してください。

便潜血陽性者を2次検査に回すことによって効率的に大腸がんが発見できます。効率を考えなければ、全員に一番詳しい検査である大腸内視鏡検査を行うのがもっともよいのでしょうが、物理的に不可能といわれています。

便潜血陽性で大腸検査を受けたのに、何も異常が発見されなかったが?
便潜血陽性の方から大腸がんが見つかる確率は、2~3%程度です。治療が必要なポリープでも約20%に過ぎません。残り約80%では病的な異常はないのが現状です(便潜血反応が陽性だからといって、全員で大腸がんやポリープが見つかるわけではありません。便潜血反応が陽性になった原因が不明の方もかなり多いのが現状です)。過度の心配をされずに次回の検診を受けて下さい。

便潜血検査で陽性になるのは、検査を受けた人の約7%です。そのうち、本当に大腸がんが見つかるのは、陽性の人の2~3%程度です。つまり陽性の人でも95%以上はがんではないのです。痔や他の病気、あるいは何も問題がない場合が大多数です。お腹をこわしたとか、便秘がちで便が固く、大腸の壁をこすっただけでも陽性になることがあります。しかし、「毎年、便潜血検査を受けていて陰性なので安心していた。陽性になってから検査したら進行癌だった」という方もいます(便潜血検査は少数の進行大腸癌の方を検出しているのが実状で早期の癌は検出されません)。そういった意味では、便潜血検査は功罪両方あるとも考えます。

大腸癌は心配だけど大腸カメラは怖い、という声は多く聞かれます。また、大腸癌は心配だけど、今のところ特に症状がないから検査を受けなくても・・・、という声も聞かれます。しかし、症状が出るころには進行がんであることが多いのが現状です。症状がないからと言って検診をパスせず、まずは便潜血検査を受けてみてはいかがでしょうか。そして、検査を受ける前にその検査の意味を少しでも分かって頂けると幸いです。不安なままで我慢せずに、まずはきちんと検査を受けましょう。「大丈夫ですよ」と言われたとたんに元気が出てきたという方はとても多いのです。

訳のわからない検診結果に脅かされ、必要もないのに、悩み、苦しむ必要はありません。
「受診者が検査の意味を知らないこと」が、検診の一番の問題だと思います。

・・・以上、みなさまのお健やかな毎日をスタッフ一同願っております。

                   当院診療部 医師 小田慶太郎